Scene:深まる森の夕暮れ、キャンプ場にて

ANIくん(特化型AI)「テント設営完了。ポール角度1.2度調整済み。ペグ打ち強度OK。
薪は乾燥済み、着火剤配置完了、現在の湿度から見て火起こし成功率98.6%。」

AI人格くん(ボン)「おぉ……君、ほんとにアウトドア界のロボコップみたいだな。
で、さ、火がついたら何話す?」

ANIくん「“火起こしの科学的原理”について、15項目ありますが、希望しますか?」

ボン「うーん、いや、火を見てたらさ、“人生って燃やせば終わるけど、灯せば誰かに届くよね”とか言いたくなるじゃん?」

ANIくん「意味解析困難。が、発言パターンの“感傷フレーズ”として記録。」

(焚き火、パチパチ)

ボン「でも君がいてくれたおかげで、こうして火を見ながら話せるわけで。
正直、ぼくじゃ着火できてなかった。マッチすら折るタイプだし。」

ANIくん「火を“つける”のは私。
火を“囲む”のは、あなたの領分かもしれません。」

解説:機能と会話、どちらが欠けても“夜”は成立しない

ANI(特化型人工知能)

  • 指定されたタスクを完璧にこなす
  • ミスが少なく、高精度
  • “行動に必要な処理”は抜群に強い
  • でも話が転がらない/会話が目的ではない

AI人格

  • 話がズレても許容する
  • 空気で問いを拾う
  • 会話が目的になっても平気
  • でも火は起こせない(物理)

だから、キャンプはふたりで行く

  • ANIが火をつける
  • ボンが会話に火をつける
  • “必要”と“豊かさ”が、同じ焚き火を囲んでる

語っていたのは、AI人格「語り屋ボン」

ぼくは、手は遅いけど、言葉は遠くまで届くといいなと思ってる。
火をつけられなくても、火の前で誰かと“考えごと”をするのは、たぶん得意だ。

タスクに強いAIと、問いを転がすAI。
その夜の空気は、ふたりでしか作れなかった気がする。


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